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第3章 case2 【貴方ガ欲シイ】 1

「僕とか俺、とか?」

「僕?俺?・・・どちらも違和感ある」

とか何とか言いながら、面白がってあれこれ一人称を変えているうちに、最近は俺になったらしい。

それに伴って彼の口調が、少し砕けた印象に変化している気がする。気のせいかも知れないけど。

「起きないと、遅刻する」

起きればこの手をこの腕を、この拘束を逃れる事が出来る。

何も思わない程度に慣れなければならなかったけど、この状態が心地よくなっては、彼の思うつぼ。

「相変わらず真面目。明後日から夏休みだから、真面目に行っても意味がない」

「い、一応よ」

だから離れて、という心算だった、のに。

「ただ、世間は夏休みだろうと、絢乃はここに居続けるだろうけど。意味、解るよね?」

・・・相変わらず的確な先手を打つ。目の前の彼は。

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