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第13章 case6 【オ前ヲ貶メタイ】 2

帰る、という言葉を口に出したことによって、思い出した事が2つ。

いつもより劣勢な感じの斎なら、何となく正直にしゃべってくれそうだし、

後で聞けば、多分はぐらかされることは必至、だから。

「ところで・・・紗香お嬢様は、私の事を探していたの?」

「そうだな。それはとても執念深く・・・」

というと斎の顔は、少し上を向き、止まる。回想しているらしい。

「探していたな」

そう言って、目線がこっちに戻る。

「上手く、私を隠していたのでしょう?」

その配慮は嬉しい。あのお嬢様の顔は最初から、攻撃的だったから。

「それは勿論。態度からして暴走していたから」

腕を斎に絡め直す。視線の距離を縮めて、肝心な答えを一瞬でも逃さない様に。

「でも、何で“声”だけ、お嬢様に聞こえてたの?」

お互いの目線が絡み合っていたのに、またここで急に斎が目線を反らす。

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