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第19章 case8 【私ニ伸ビル複数ノ手】 1

足は拘束されず、立てている状態だから・・・。

恐る恐る歩き、固い物にぶつかる。頬を恐る恐る寄せるとひんやり・・・。壁?ドア?

とりあえず、体を壁?に当てて、左右に動かしてみる。目の前が引き戸なら、ずれない・・・かな?

と冷静に考えている心算でも、ドンドン口の中には唾液が溜まっていく。

溶ける、飲みたくない、吐き出したい、出たい、何なのさっきの人は!!

その時、ガラッ、と急に右から音が聞こえ・・・思わず帰って来!!と思って・・・。

ビックリして・・・飲み込んじゃった。

や、ヤバイ。

立ち尽くしていると、ドアの空いた音がした方向から仄かに・・・煙草の匂い。

「・・・何やってんだ?」

そして緊張感のない、マイペースぶりを発揮した声の主は、目隠しと縛られていた手を外してくれた。口元のテープは自分で取って。

「・・・遅いよ」

視界がぼんやりしているけど、煙草の匂いで間違いのない目の前の人物に、助けてくれたお礼を言うべき・・・なのだろうけど、口から滑り出たのは、お礼じゃなかった。

「ギリセーフだろ。つーか、簡単に捕まるなよ」

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