テキストサイズ

contract

第19章 case8 【私ニ伸ビル複数ノ手】 1

「顔真っ赤だな。おぶさるか?」

振り返り、私を見ると均さんがそう言った。

おぶさる?おんぶ?恥ずかしいよ、冗談じゃない・・・と普通は思うのだけど、どうもフラフラする身体と頭じゃ、何も考えられないというか、楽になる方が先で。

「そうする」

「ほら、帰って寝ろ。久しぶりで疲れたんじゃねぇか?」

均さんが腰を少し下ろし、私をおんぶしてくれる。煙草の匂いって、普通は嫌いなんだけど、臭いし。

なのに、何故か安心して、目を瞑る。知っている人の匂いだから、かな。

「普通の先生は、おんぶなんてしないよ」

「肩書が養護教諭になってっから、いいんじゃね?」

「偽物だけどね」

「一々言うな。バレる」

「大体、均さんが先生っガラじゃないでしょ?」

「強引に押し込んだ、斎が悪い。俺は向いてないっつーのに」

ぶつぶつ、斎に対する文句を口にしながら、均さんは私に対する文句は一言も口に出さず、屋敷まで連れて行ってくれた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ