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第20章 case8 【私ニ伸ビル複数ノ手】 2

・・・サクラがあれから姿を1度も現さない。

目の前に現れるのは、ラセツだけ。

ラセツに「サクラに会わせて」と頼んだこともあるし、「サクラの方を選ぶ」とはっきり告げたこともある。

が、望みはサクラ本人に言わないと終わらない、とラセツは言う。

サクラに会う必要があるのに、サクラは出てこない。

ラセツと向き合う時間が、増える。それは無駄な時間の経過。

段々目の前のラセツに対して、良い感情を抱かなくなる。苛立ちが・・・増える。

途方に暮れる時間も、増える。

私が抱くラセツに対する負の感情を感じているだろうに、ラセツ自身は初めて会った時と同じ、子供の無邪気な顔を見せているだけ。

その表情すら・・・非常に、腹立たしい。

「ラセツ、サクラに会わせて」

「今いないよ」

白々しい嘘をつく、と思う。

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