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第25章 case10 【私ハ貴方ノ手ヲ握ッテ】 2

「・・・嘘でしょ・・・・・・」

まさに絶句。

部屋の中は明るかった。電気が復旧したわけでは無く、燃え盛る火のお蔭で。

・・・桜の樹が、燃えている。

火の勢いは、風と、降り出したらしい雨によって、消えまいとユラユラ揺らめいている。

消えたくないと抵抗しているかのよう・・・。

そして。

ギギギギギギギギギと音を立て、根元にあった亀裂から上が重力に従って倒れていく。


ギギギーーーーーィッ

ドーーーーーーーーーーーン


倒れた事によって、火柱が形を変えた。最後に足掻く火の揺らめきが・・・。

「・・・不吉」

無意識に呟いた言葉は、何を暗示しているのか。

不安が不安を呼ぶ。

斎は、斎は何処に?

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