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第25章 case10 【私ハ貴方ノ手ヲ握ッテ】 2

「永依さんをどうしたのッ!!」

普通は逃げだすのかも知れない。その方が賢明だし、正解。男の力に叶う筈は、ない。

なのだけれど。

冷静な判断が出来なくなっている私は、男に食って掛かった。

向かって行って、胸ぐらを掴もうと、手を伸ばす。

が、いとも簡単に捕まる腕。

自分自身が非力だと知っていても、歯がゆくて仕方ない。

大体、目の前の男が永依さんをどうにかした、という事実は無いのだけれど。

何時もとは違う暗闇、何時も落ち着き払っている筈の斎が先程見せた焦り、

血まみれかもしれない永依さん、永依さんのピンチに全く姿を見せない的場君。

様々に膨れ上がった“不安“が、私自身から冷静さを確実に奪い取っていた。

「貴方は誰!?腕を離してッ!!」

捕まった腕を振り払おうと、自分自身の腕を振り回すけれど、相手はびくともしない。

「離してよッ!!」

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