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第25章 case10 【私ハ貴方ノ手ヲ握ッテ】 2

口を押えていた男の手が上にズレたところで、下唇が自由になったから、

思いっきり手を、噛んだ。

「ったッ、何する女!!」

噛んで、捕まっていた手の力が緩んだ。その隙に逃げる。逃げる場所は・・・ここから近いのは・・・食糧庫!!

「逃がすかッ」

シュッ、と何かが後から飛んできた音がした。が、後ろを振り返らず逃げる。

「効かない!?」

男の言葉は、明らかに狼狽えている。

「待てッ」

待てって言って、待つ人はいない。走って食糧庫の扉を開けようと、ドアノブに手を掛け、引こうとしたところで、

ドンッとドアを押し、食糧庫のドアを閉める男。

と同時に。

「眩しいッ」

停電していた筈なのに、いきなり電気がつくから、眩しくて目を瞑る。

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