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温もり

第12章 八日目

「ぎゃあ! げえ! うー、ああ……」

 隣の檻から響く悲鳴と呻き声に零九は目を覚ます。
 見なくても彼女の体が弄ばれているのだと判り、彼は耳を塞ぐ。ろくに動く事も出来ない自分に、彼女を助ける術などないのだ。自分が身代わりになって彼女を救うと言う選択肢も頭の片隅にあるのだが、何の躊躇いもなく暴力を振るい、罵られるのに耐えるだけの気力はもう、とうに失せてしまっている。ラディの言う様に、彼らが自分を拷問する事に飽きてニニを開放してくれるなら、その方が良いと思う位だ。

 零九は彼らの注意を引かない様にゆっくりと動いて、彼女を見る。
 悲鳴が聞こえなくなったのは、口に突っ込まれているからであり、粘液を擦り付けられる音は断続的に聞こえる。
 抵抗すれば殴られると理解してはいるのだろうが、それでも彼女は何度も何度も抵抗を試みては鉄パイプで殴られている。頭を殴れば死ぬと知っている研究員は、動きを封じる為に足を集中的に殴っているので、膝がどこなのかはっきりしない程に腫れ上がっている。

「や……め……」

 気づけば零九は檻の中から手を伸ばし、制止の声を上げていた。研究員はその声と言うよりは、排泄物に塗れた彼の纏う臭気に気付いて振り向く。

「んだ? 近寄ってくんなよ。てめぇ、臭ぇんだよ」

 言ったと思うと男は腰を振り、彼女は痛みに体をくねらせて抵抗する。足は痛みに動かせないのだろう。

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