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温もり

第13章 九日目

 どれほどの時間、彼女が呼びかけていたのか判らないが、長い時間、彼女は零九を心配するように声を上げていた。
 零九は何度かは答え、もう少し会話らしい事をしたいと思ったのだが、絶叫を上げ、何度も何度も締められて受けた喉笛のダメージが大きく、喋るだけで酷く痛むため、結局は諦めてしまった。

 ガチャガチャ、と扉を開ける音がし、零九も彼女もガバッと起き上がる。二人とも、研究員が入ってきたのだと、慌てて逃げようとしているのだが、体のダメージが大きいために、うまく動けずに、殆どもがいているだけになっている。
 だが、予想に反して入って来たのは、LL達であった。
 彼らは手に掃除道具を持っていて、それでニニ三を始めとする掃除係であると、零九は判った。

「あー!」

 零九と似ていると気づいた彼女が声を上げ、両手をバタバタさせて嬉しそうに笑う。だが、零九は研究員の言った言葉が頭を過ぎり、喜べずにいる。

『はっ、よくもまあまあ、殺しあう兄弟だよな』

 掃除係の五人は、彼女と零九を交互に見て、何かボソボソと耳打ちし、頷いてから彼女の方を見る。

「ま……」

 彼女を殺す気だと思った零九は、止めようと彼らに手を伸ば すのだが、覚悟を決めた彼らの凍てつく表情に戦慄を覚え、それだけで言葉を失ってしまった。

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