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温もり

第14章 十日目

 何度母の中で果てたか、欲を吐き出したか、吸われたのか、零九には分からない。ただ、快楽を求めるだけの汚らわしいとすら言える欲は鎮まる事を知らず、体が動く限り続けなければ、気が狂ってしまいそうだった。

 母の嬌声に息子達の低い喘ぎ声が絡む。
 細い腰を押さえる手に女の手が激しさを求めて添えられる。
 ぬめる粘液に塗れたそれを、扇情的に舌が形をなぞる。
 まるで貫こうとするように擦り付ける。
 痺れる頭から汗となって知性が流れ出て、体を伝う。
 治まらない情欲に、体が溶けていく。

 気持ちが良い。ぞくぞくする。何も考えられない。もっと気持ちの良い事を。もっと強い刺激を。苦しい程、気持ちの良い事を……。

 耳を齧り、舌をしゃぶり、背中に唇を這わせる。汗の匂いも、味も、飽く事がない。もっと濃い所はないかと探してしまう程に。

 何かが事切れて、白く弾ける。
 溺れる様に苦しいのに、止められない。
 爪を立てられて血が滲んでも、気にならない。
 歯を立てられて痛くても、快感とない交ぜになって鼻にかかる甘い吐息が漏れる。

 逃れられない、何もかもを飲み込む欲望。
 二人の視線の先にいる女は、白濁した体液に塗れながら、愉悦に嗤っている。
 それは、あまりに不気味な微笑みだった。

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