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温もり

第15章 十一日目

 冷たい床の上、全裸の零九は痛みに目を覚ました。
 酷い吐き気に口元を押さえようとするが、ろくに手が動かず、そのまま二回えずき、咳き込む。唾液が口から出て、ゆるゆると手で拭う。
 ギシギシと軋む体はどこを動かしても酷い苦痛を伴い、うつ伏せから仰向けになるだけでも顔を歪める程だ。

「ニニ五……」

 彼は大丈夫だろうか、と零九は呼びかける。本当は姿を見たかったのだが、こんな状態では首を動かして探すのも困難だ。
 返事があれば良かったのだが、彼から返事はなく、仕方なく零九は大きく息を吸ってからゆっくりと体を起こす。骨の軋む音が聞こえそうな程、全身が痛む。汗も白い体液も乾き、べったりと肌に張り付いていて気持ちが悪い。

「ニニ五……」

 三メートルほど離れた所で同じ様に、全裸でうつ伏せになっている彼を見つけ、零九は体を引きずって近寄る。
 たったそれだけの距離にも関わらず、息がきれて一度休まなくては進めなかった。

「ニニ五」

 呼びかけて軽く頬を叩くと、彼は顔を歪め、目を開いた。

「大丈夫、か?」

 見た感じでは怪我はない様で、同じ様に酷い軋みと疲労感があるだけだろう、と思いつつも零九は問いかける。

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