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温もり

第15章 十一日目

 見下ろす彼を見て、ニニ五は一瞬の間を置き、思い出したらしくポロポロと涙を流した。

「ごめん。俺のせいで……」

 ニニ五は動けず、顔を逸らす事も出来ず、零九に謝罪する。自分があんな事を言わなければ、あんな目に遭わなかった。と。
 零九はここに来た時からまともな状況など諦めており、女数人に首を締められながらの輪姦よりはまだ良い、とすら思っている。

「相手はラディだ。どうする事も出来ない」

 零九はぼそりと返す。
 ニニ五がここに来てしまったのは、新たな悲劇でしかない。女ならば先の女の様に輪姦と暴力だろうが、男はいたぶられるだけだろう。ラディが来たら、また先日の様な強烈で倒錯的な性交渉を強要されるのだろう。

「いつから、ここに居るんだ?」

 泣きながらニニ五は言う。体を起こしているのも辛い零九は彼の前に横たわり、それはどう言う意味なのだろうか、と思う。

「判らない」

 日の光もなく、時計もないこの部屋ではいつからなどと判別つけられるものなどない。

「お前、今でもニニの所にいるぞ」

「え?」

 ニニ五の言葉に、零九は掠れた声を漏らす。

「でも、ここにいるなら、あれは偽物、なんだろうな……」

 ふぅ、と息を吐き、ニニ五は語る。零九は言葉を失い、その偽物がラディである事は理解したものの、ニニが何をされているのだろうかと思うと、体が凍りつきそうな恐怖が襲った。

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