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温もり

第4章 母

 床にへたり込んだせいで血まみれになったニニを支え、零九は殺処分室から出る。

「終わったか?」

 掃除係達がそこで待っていて、零九は無言で頷く。泣いているニニも、泣いていたらしい様子の零九を見ても、彼らは何も言わない。
 慣れてしまった、と言うのもあるが、二人が自分達を受け入れようとしないので声をかけて慰めようとしても出来ないのだ。零九など余計に無理をさせてしまう。ニニ四だけはそんな彼にも声をかけているのだが、効果は殆どない。

「今日は何匹だ?」

 ニニ三が零九に尋ねる。
 嗚咽を漏らして泣いているニニの肩を抱き、彼女を見ながら彼は答える。

「六」

 極端に短い言葉に、今回はLLと解る者が含まれているのだとニニ三は察する。それから、ニニがいつも以上に泣きじゃくっているのと、零九の表情が暗い事にも合点がいく。

「…………」

 死体処理も辛いが、命を奪う事の方が遥かに辛いとニニ三は知っている。だから二人に何か声をかけたいと思ったが、結局良い言葉は思いつかなかった。

 掃除係のみんなが殺処分室に行ってしまった事に気づいたニニ三はLLの血に塗れている二人を心配そうにチラチラと見ながら、使い慣れた掃除道具を手に殺処分室に入っていく。

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