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温もり

第5章 地獄

「受けなさい。LL達と、アレの命よ」

 ラディは言い、零九の腫れた唇に自らの唇を重ねる。
 全く拒絶しない彼の口に、熱く、まるで血を何倍にも濃くした様な苦い、ドロドロした物が流れ込んで来る。そんな飲み込みにくい物を大量に流し込まれて零九は噎せ、それを吐き出す。

「あら、駄目よ吐いちゃ。飲みなさい。じゃなきゃ、死ぬわよ?」

 ラディは笑いながら彼の手を強く引き、跪かせる。と思うと髪を掴んで引き倒し、床に顔を擦り付け、先ほど吐き出した物を舐めてでも飲めと要求する。

「良いの? この中に大好きな妹の命も入ってるのよ? せっかくあげたのに、要らないの?」

 グリ、と彼の顔を床に押し付け彼女は実に愉快そうに顔を歪める。どうあがいたところで、零九は自分に従う事を知っているのだ。そして、僅かに抵抗を試みると言うのは、彼の中にまだ気力が残っていると言う事。
 それがいつ音を立てて折れるのか、ラディは楽しみで仕方がなかった。

 零九は顔を押し付けてられる痛みと、ラディの言葉に床を赤く染める赤い生命力の塊を舐めた。

「ふふっ、最初にちゃあんと飲めてたら、床なんて舐めなくて済んだのにね?」

 綺麗に一雫も漏らさずに舐めるのよ? 彼女はそれは口にしないが、暴力に腫れ上がった顔を屈辱に歪める彼を見下ろす表情はそう語っている。
 言う事を聞かないと痛い目にあうわよ? 痛いのは嫌でしょ? それでも言う事を聞かないなら、ニニはどうなるのかな? ラディの纏う空気は重さを持って零九にのしかかり、抵抗も反抗も許さない。

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