テキストサイズ

温もり

第6章 二日目

 ラディは鼻歌混じりに食事を運んで来た。

「零九、ご飯よ」

 檻の中で膝を抱えている彼に声をかけるが、彼は僅かに顔を上げてこちらを見ただけで、近寄って来ない。

「いらないの? ニニと同じ物を持って来たのに。あの子も今、これを食べてるわよ?」

 クスクス、と笑いながら言うと彼は赤く腫れた顔を両手で隠しながらゆっくりと歩いて来る。右足が痛むのか、少し引きずっている。
 恐る恐る、と言った具合で零九は檻の中からラディの持つトレイを覗き込む。

「食べる?」

「……うん」

 空腹には勝てないらしく、零九は小さく頷き、ラディは格子の隙間から皿を渡す。
 最後に水を渡すと、それは何の躊躇いもなく一気に飲み、床に置いた。

「おかわりいるかしら?」

 床に座って食べている零九に、同じ様に座ってラディは尋ねる。

「……うん」

 零九はそろりとコップを差し出し、ラディはそれは受け取って手を翳して水を入れてやる。
 口を開いたり、噛んだり、と言った動作のいちいちに痛みが走るらしく、ゆっくりと食べている彼の顔は苦痛に歪み、彼女には滑稽に映る。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ