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温もり

第6章 二日目

「足はどうしたの?」

 顔は単純に殴られたのだろうと、ラディは訊くつもりはない。ただ、自分がいた時には痛がっていなかった足を引きずっているのが不思議だった。
 零九は少しずつ生野菜のスティックを食べ、俯く。

「蹴られた」

 ポツンと答え、再びゆっくりと食事をする。
 言葉少なに答えるのは、元よりの無口さもあるが、思い出したくない、と言うニュアンスも含まれており、ラディはあえてそれ以上尋ねなかった。

「そこから一歩も出てないんでしょ? トイレは?」

 代わりに、より屈辱的な質問をした。あくまで優しい声色で。
 彼は痛みから別の物へ顔を歪め、食事の手を止める。

「いつまでここに居れば良いんだ?」

「さあね? あの人達が満足するまでよ。まあ、安心しなさいよ。貴方がここにいる間はニニは大事にしてあげるから。そして、あの人達が満足したら、貴方と一緒にニニもここから出してあげるわ」

 彼女の言葉に、零九は大きく腫れた頬を緩ませる。

「本当に守ってくれるんだよな?」

 口先だけの言葉かもしれない。
 だが、零九はそれに縋るしかなかった。


 食事が終わり、零九は排泄に使えと言われたプラスチックの容器をラディに渡す。彼女は表情も変えずにそれを持って行った。

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