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温もり

第11章 七日目

 女から目を背け、零九は座っているのも辛いダメージに横になり、悲鳴と笑い声を拒絶して耳を塞ぐ。
 彼女助ける方法を考えるんだ、と微かにそんな声がしたのだが、痛い、苦しい、休みたい、と身体中が訴え、その声は掻き消される。

 『そんな酷い人だと思わなかった』
 『誰も見捨てない人だと信じてた』
 『傍観者なんて加害者と一緒』
 『卑怯者、裏切り者』
 ニニの声が頭に響き、胸が張り裂けそうな程に苦しくなる。
 
「ニニ、赦して……もう、動けない……」

 どこから聞こえる声なのか知りながら、零九は赦しを乞い、目を瞑って両耳を塞ぐ。
 ニニの声を借りてまで自分を責める自分が怖くて、いつになったらいなくなり、この状況を享受出来るのか。それは訪れないと零九には解りきっていた。なぜならそれは、大切にしていた自分だからだ。



「あー! あー!」

 女性の声が、悲鳴から呼びかける様な物に変化していた事に気づき、零九は自分が何時の間にか眠ってしまっていたと知った。
 反射的に目を開け、ゆっくりと起き上がって振り向けば、女性は向こうの檻の鉄格子に捕まり、心配そうにこちらを見ていた。

「あー! あー!」

 何かを訴えているらしい彼女に近づくと、檻の中から手を伸ばして来た。幼いLLが年長のLLに甘えている表情に似ている、と思った零九は痛みを堪えて檻から手を出す。
 力を入れると苦痛なので、お互い何とか触れ合える指先に、そろりと添えるだけに留まる。

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