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私と高志の長い一日~とっておきのキスは恐怖の後で~

第2章 色っぽい花魁の次は身も凍る夜泣きそば屋

「高志、こういうシチュエーションって、どこかで聞いたことない?」
 冷静になるのは少し私野法が早かったみたい。
 高志はまだ青ざめて震えている。
「えっ、な、何が?」
 声まで震えてるよ。
 本当に、これで野球部のエース兼主将が務まってるのかねぇ。
「だからさ、あたし、子どもの頃に読んだことがあるの。子ども向けの怖い話に、のっぺらぼうの話があった。さっきのおじいさんみたいに、江戸の昔には夜泣きそば屋だと思って声をかけた通行人すがいたんだって。で、振り向いたそば屋っつうのが目も鼻も口もないのっぺらぼうだったって」
 ほかにも、ろくろ首とか色んな妖怪の話が出ていたっけ。私は金的に怖い話好きの人間だから、何度も読み返したよ。
「本当なのか? 現実にそんな妖怪がいるのか」
 高志は声を震わせながら、半泣き。あーあ、これじゃ、ロマンスが芽生えるどころか、余計にこいつの保護者気分になりそうだね。

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