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私と高志の長い一日~とっておきのキスは恐怖の後で~

第2章 色っぽい花魁の次は身も凍る夜泣きそば屋

「おい、真美。このじいさん、何っつうか、ちょっとヤハ゛そうじゃないか?」
 高志が私の袖を引っ張ったのと、おじいさんかくるりと振り向いたのは、ほぼ同時のこと。
「わたししゃ、こんな顔だが、それでも、あんたらはわたしの作る蕎麦を食べたいのかえ?」
 ふり向いたおじいさんの顔は―、何とつるんつるん、つまり、目も口も鼻もない、のっぺらぼうだった。
「―」
「ひ、ひぃ」
 私は声すら出なかった。
 高志は女のような悲鳴を上げた。
 私たちは、のっぺらぼうを見るやいなや、その場から脱兎のごとく駆けだした。
「見たな~」
 と、空恐ろしい声が響く。
 追いかけくるのか!?
 信じられない想いだったけれど、しばらく二人とも死にものぐるいで走って、私は高志に告げた。 

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