テキストサイズ

私と高志の長い一日~とっておきのキスは恐怖の後で~

第3章 謎の江戸っ娘はいったい誰!?

 ちょうど私たちが井戸の真ん前まで来たその瞬間。
 薄気味悪い音楽が流れてきて、カラカラと釣瓶が動くような音が聞こえてきた。
 いよいよ、おいでなすった!
 来るべきものが来たと、私は覚悟する。案の定、よくテレビの効果音で耳にするような定番の音楽に合わせて、井戸から白いキモノを着た女の人が出てくる。
 これも蝋人形だろうね。確かによくできるけど、ちょっと落ち着いて見てみたら、表情とかに生気がないのが判るよ。
 だけど、高志には幽霊を冷静に観察するだけの精神的余裕は皆無のようだ。
「う、うわあー」
 素っ頓狂な悲鳴を放ち、みっともなくその場に尻餅をついた。
「出、出た。真美。出たぞ」
 そんなことはいちいち言われなくたって、判るよ。取り柄は両目の視力が小学校以来、1.5より下がったことくらいしかないんだからね。
「ど、どうする?」
 あーあ、完全に腰が抜けてるみたい。私はため息をついた。
「どうするも何も、出てきちゃったものは仕方ないでしょ」
「で、でもっ。お前」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ