いつもそこには、君がいて
第1章 1 月曜日
それから5分ほど、私が菊川くん宛ての作業引き継ぎ書を書き終えたあたりに、福田さんは息を切らして戻ってきた。
「お待たせしました。はい、これどうぞ」
見ると福田さんの手の中で、暖かそうなココアの缶がこっちを向いていた。
「あ、すみません、いただきます。あれ、そこの自販機にココアってありましたっけ?」
「ないから、ちょっとそこのコンビニまで……」
“そこのコンビニ”と言っても、ゆうに数百メートルはある。
その距離の分、1月の底冷えの風を受けた福田さんの鼻と頬は、うっすら赤くなっていた。
「え、そんな、わざわざ。いつものコーヒーで全然構わないんですよ?」
「いや、いつも峰さんコーヒー残してるし、疲れた時には甘い方がいいでしょ。だから俺もなんです。ほらね」