いつもそこには、君がいて
第1章 1 月曜日
いつもブラックしか飲まない福田さんが見せてくれた、そんな心遣いがとても嬉しくて、“甘さひかえめ”なはずのココアがやけに甘く感じた。
こんなさりげない気遣いができる人って、何となく憧れる。
「で、話ってなんです?」
「あ、そうでした。じつは私、今回の異動なんですけど……」
私は胸に絡まったもやもやを、ゆっくりほどくように話しはじめた。
前にも言ったが、今度の異動に関しては、私自身の希望が反映されている。
“希望”といえば聞こえは良いが、正直なところを打ち明ければ“逃げ”なのかもしれない。
私にはもうこの店で、この仕事でやっていく自信などなくなってしまったのだ。