いつもそこには、君がいて
第1章 1 月曜日
「それからね、なんか最近虚しくなるんです。店と家の往復だけが自分の生活のすべてみたいで」
実際のところは10年もそうやって、あくせく働いてきた毎日だったはずなのに、仕事に行き詰まってからそれがやけに身に沁みてくるようになった。
毎日自分が歩いていた変化に乏しい平坦な一本道は、気付いた時には傾斜のきつい坂道になっていて、ふとこうして立ち止まると、次に踏み出す一歩先さえ見えなくなってしまってる。
32を過ぎた女がひとり……
使い道も使う時間もないお給料が、無駄に貯まっていくだけだった。
「そんなふうに考えてたら、異動願い、出しちゃってました」
「“出しちゃってました”って……。うーん、峰さんらしくないなぁ」
「はい?」
私らしくないって、どういうこと?
別に、福田さんに同情してもらえるとか、何かいいアドバイスが聞けるとかを期待していたわけではないけれど、“私らしい”という小さな単語が妙に胸を掻き乱した。