いつもそこには、君がいて
第1章 1 月曜日
「あの、峰さん?……」
「あ、すいません。福田さんには迷惑な話なのに、聞いてもらったうえに当たるなんて」
「いや、あの……」
「だいぶ無駄に時間を使わせてしまいましたね。ごめんなさい。さ、もう帰りましょう」
顔を見ることなんて到底できるわけもなく、話を自分勝手に切り上げた私は、そそくさと自分の車へ歩き出した。
それ以上、福田さんの言葉を聞く勇気がなかったのだ。
「じゃ、お疲れ様でした。また、あさってお願いしますね」
背を向けたまま一方的に、それでもできるだけいつもと変わらないようにと大声でした挨拶は、もうガランとした駐車場にわずかにこだましていた。
背中には福田さんの気配がただあるだけ。
乗り込んだ運転席のシートは冷たくて、エンジンをかけたと同時に流れ出したカーペンターズの音楽はいつになく淋しく車内に響いてきた。