いつもそこには、君がいて
第2章 2 水曜日
「え〜、いじわるしないで教えてくださいよ」
「だめ。できるはずだもん」
こんな甘え上手も菊川くんらしい。
異動までのあとひと月ちょっとで、自分が三上さんから教わったことを、ひとつでも多く彼に伝えたいな、なんて思う自分がいた。
「もう、俺が苦手だって知っててやらせるなんて、フジコさん、鬼ですね」
計算機を片手に頭をひねっている姿が、妙に子供っぽくて笑えてくる。
「今気づいたか? ほらほら、やんな! 三上さんから文句が出ないように、ね」
そう言ってポンポンと肩を叩くと、はぁっと大きくため息を吐き出した菊川くん。
「それは無理ですって。三上さん、俺にはめちゃくちゃ厳しいんですから。……俺、嫌われてんのかなぁ」
「ふふふ、そうかもね〜」
“それは反対だよ”と言いかけたが、止めておいた。