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いつもそこには、君がいて

第2章 2 水曜日


 菊川くんはどこか私と似たところがあって、褒められて伸びるタイプというより、けなされて、反骨心で伸びるタイプだと思う。

 逆を言えば、優しい顔を見せるとそれに甘えて調子にのっちゃうってとこだろうか。

 三上さんもきっと、その辺はお見通し。

 私の異動が決まるとなれば、必然的に誰かがここのマネージャーになるわけだけれども、部門の人事権ももつ三上さんが何も言わないところをみると、きっと菊川くんがそのままマネージャーにシフトしてくるはずだ。

 不振続きのこの店だから、きっとマネージャーとしてのスタートはかなり厳しいと思う。

 それに備えて、今から少し頑張ってもらわなくては……


 菊川くんの横で、腕を組んで机に寄り掛かりながら、彼の手元をじーっと見ていた。

「こんなもんっすかねぇ」

 “こんなもん”か……

 アバウトっていう言葉は、多分こういう時に使うべきなんだと思う。

 いかにも菊川くんらしい。

 いろんなデータで発注量を決めるのが、基本と言えば基本だが、なんせそこのところが一番苦手な彼のことだから、まるで私にとってはギャンブルのような数字を書いていく。

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