
いつもそこには、君がいて
第2章 2 水曜日
競合店が臨時休業するだとか、よほどのことが起きない限りだいたい想像したとおりに残ってしまうような量だが、そこは人に言われるより、自分で失敗した方がよく身につく。
口を挟むのを我慢するのは、まだ私の責任のうちに失敗して覚えてほしいから。
「まずは、菊川くんの思う通りにやってみなよ」
計算機を使うわりにそれが反映しない書類の数字を見ながら、私がそうつぶやいたところに、売り場側の出入口から福田さんが段ボールを抱えてやってきた。
「毎度どうも。タチバナハムです」
「はいはーい」
一昨日の気まずさを少しでも感じさせないように、いつもの返事を返すと、福田さんもニッコリ笑ってくれた。
内心、どんな顔で挨拶をすればいいものかと思っていたから、福田さんのいつも通りの笑顔に救われた気がする。
「あれ? 今日は菊川さんが机に向かってるんですね」
「そうなんです。菊川くんがどうしてもやりたいって言うもんで」
「なんすか、それ。ほんっと今日は意地悪っすね。フジコさんがやれって言ったんでしょうが、もう!」
