いつもそこには、君がいて
第2章 2 水曜日
「笑ってるとことか、一生懸命なとことか……。泣いてる沙織さんも、もちろん好きですけど、でも、俺はやっぱり笑っててほしいんです」
一気に顔が熱くなる。
「ずっと言えなかったんですけど、このままじゃ、何て言うか……」
誰かに想いを伝える時、人はこんなに眉をひそめるものだろうか。
いつも笑顔の福田さんとは違う、真剣というか、どこか悲しそうな顔。
一瞬の沈黙に私は記憶を探ってみたけれど、少なくとも自分の知る限りでは、こんな辛そうな告白は見当たらない。
「あの……福田さ……」
「俺、来月から異動なんです」
異動!?
「ここに来ることも、もうできなくなるんですけど、居なくなる前にせめて、自分の気持ちだけは伝えたくて」
居なくなるって、そんな……
「沙織さんがいろいろ大変な時に、こんなこと言うのって、なんか卑怯な気もしたんですけど、どうしても言わなきゃダメだと思って、俺的に……。すみません」
「ふ、福田さん、あの……」
何か言わなきゃいけないことは、いくらこんな私でもわかってる。
でも……
プラスとマイナスの電気が同時に体を通っていったような、初めて感じる微量な衝撃で、私はまともに口を動かせないでいる。