いつもそこには、君がいて
第3章 3 金曜日
私の店の巡回担当になる前の福田さんは、どこか、入社したての私に似たところがあったようで、今のように真面目で一生懸命だったとは決して言えない営業マンだったらしい。
「それがさ、お前んとこに来るようになって、ずいぶん変わったんだって」
「変わった?」
「女の子でもさ、体力的に辛そうな仕事を楽しそうに一生懸命やってるのがすげぇなって思ったらしくてさ。自分もこのままじゃダメだって思ったんだと」
あの笑顔を見るかぎり、模範的な営業マンのイメージしかなかったので、それにはちょっと驚いた。
その一方で、まるっきり裏方の自分の仕事を、そんなふうに見てくれてた人がいたんだと思ったら、なんだかとても嬉しかった。
「でさ、俺が福田ちゃんの気持ちを知ったのは、えーと……俺が離婚してすぐだったから、おととしの7月くらいだな」
それは、タチバナハムの今の営業所長が赴任してきた歓迎会で、私も参加した居酒屋での席だった。