いつもそこには、君がいて
第3章 3 金曜日
「三上さんから? もしかして店が違うんですかね……今、電話してみます」
残りの確認は福田さんに任せ、バックヤードから外線で三上さんの携帯にかけてみた。
「……はい、三上」
「おはようございます、峰です。真空漏れ、うちじゃないですけど、南店かどっかの間違いじゃないですか?」
「ん?……ああ、そうだったかな」
明らかになにかおかしい返答である。
「ちょっと!」
「どうだっけ……、わかんねぇなぁ、へへへ」
「三上さんっ!?」
「あ、ごめんごめん。寝ぼけて福田ちゃんに電話しちゃったみたいなんだよ〜」
「寝ぼけてって……なんなんですか、もう!」
三上さんが“ごめん”なんて口走るのは、いたずらをした時ぐらいなもんで、声の調子だってヘラッヘラもいいところ。
「それにしても福田ちゃん、もう着いたのか、早ぇな……」
「“早ぇな”じゃないでしょうが、まったく!」
静かなバックヤードでの電話のやり取りは、福田さんの耳にも届いていたようで、ホッとしたような、やれやれというような表情で在庫分のブロックを冷蔵室に片付け始めてくれていた。