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完熟の森

第32章 祭り 1

また祭りの季節だった。


雫は粋な浴衣を着ていた。


ルーズに束ねた髪でうなじを大きく出し、紺に白地の菖蒲の柄に黄色い花粉が散りばめられ、それが妖艶に見えて、なんか昔の女優のようだった。



「母の浴衣なの。どう?」


僕の前で後ろ姿を見せたり、前を見せたり機嫌が良い。


「綺麗だよ。んー色っぽい!」


「でしょう」


雫はさらに機嫌良く、得意気な顔をしていた。


「千晶も着せてあげる」


僕は驚いた。


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