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完熟の森

第40章 卒業

僕はその日歩いて雫の森へ向かった。


少しだけ、木々に芽吹きを感じ、桜の一角は春本番を、今か今かと待ちわびている。


季節の移り変わりをこの森で毎日感じ、雫に会える気持ちを高揚しながら通うのも、少なくなるだろうと、ちょっと寂しくなる。


僕はドアを二回ノックしてから開ける。


「雫、ただいま」


いつも抱きついてくるのに今日の雫はそうしなかった。


「卒業おめでとう」


雫はソファーにしゃんと座り、僕に微笑んでいた。



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