ガーディスト~君ヲ守ル~
第5章 姿をうつすもの
「ちょ…ゆーじ!!」
皆から一番離れたところにいた『つばき』が、祐司の元に駆け寄った。
「つばき…」
「さっきのはなんだったの!?」
つばきは泣きそうな顔で祐司を見上げる。
周りの異変に気づいたものの、どうしたらいいかわからず、デスクの上に登って固まっていたのだ。
「ごめん、怖い思いさせたな」
祐司は『つばき』の頭を優しく撫でる。
それを見ていた護が「へぇ」とにやついた。
「つばきちゃん♪はじめましてだね」
護はニコニコしながら『つばき』に話しかける。
「はじめましてじゃないよ?」
「ああ、そっか。車の中で一瞬出てきたよね?」
「そうじゃなくて、さっきエレベーターの前でしゃべったよ?」
「え……あっ!あの時からすでにつばきちゃんだったの?!」
「そうだよ」
『つばき』はニカッと笑う。
そして…
「今度は失神しなくて良かったね♪」
と、ニヤニヤしながら言った。
「は?! えっ…?なんで知って…」
『つばき』はクスクスと笑った。
2人の会話で、場が明るくなる。
呆然としていた冴子だが、2人の会話を聞いて徐々に落ち着きを取り戻した。
「…つばき?あなた…東つぐみでしょ?」
『つばき』はハッとする。
やばい…
ここで話す会話じゃなかった。
3人は固まった。
「ちょっとまって…」
冴子は一旦考え込み、再び話し始める。
「その名前で思い出したわ…
そういえば1ヶ月前に『つばき』って子、ここにいたわ」
「!!」
3人は一斉に冴子に集中した。
「つばきがここにいた?働いてたってことですか?!」
祐司は目を見張った。
「そうよ、バイトとしてね」
「あの…履歴書とかありませんか?」
『つばき』が震えた声で言う。
「どうだったかしら…入れ替わり激しいから履歴書はすぐ捨てちゃうのよね」
そう言って冴子は自分のデスクの引き出しを開け、履歴書を探し始めた。
ファイルを取り出しペラペラとめくる。
「ありました?」
待ちきれず、『つばき』が問う。
「なかったわ…」
その返答に、淡い期待が脆く崩れた。