ガーディスト~君ヲ守ル~
第5章 姿をうつすもの
落ち込む『つばき』に、
「つばき…諦めるのはまだ早い。ここで働いていた『つばき』の情報を集めよう、何かわかるかもしれない」
祐司は優しく言った。
「あの…」
今まで会話を黙って聞いていた尾形が、急に口を開いた。
「も、もしかしたら…あたしのせいかも…」
祐司たちは、今度は一斉に尾形を見た。
「あたしが…鏡に向かって言ったから… 」
「何を言ったんだ?」
護が聞き返す。
「1ヶ月前…『つばき』という子がバイトで入ってきたの…。すごく明るくてかわいくて、私はそんな彼女がすごく羨ましかった…」
「…」
「でもある時、彼女に『声が小さいからもっとお腹から声出すといいよ』って言われて…自分の欠点を言われたと思ってむかついてしまって…
鏡に毎日彼女の悪口を言い続けたの…」
「こわっ…。てことは今まであんたはそうやってむかついたことを、全部鏡にぶちまけてたってわけ?」
冴子が冷たく言い放つ。
尾形は真っ青になりながらも頷いた。
「……そしたらある日を境に、彼女はバイトに来なくなりました…」
「!」
「事故に…あったみたいで…」
『つばき』は思わず口を手で覆った。
「…私はとんでもないことを、してしまったんです……」
「そうやって、私のことも殺そうとしたわよね!!!」
冴子は尾形を睨んだ。
「…ごめ……なさい……私はただ全てを吐き出したくて…」
鏡に向かって嫌なことを吐き出せば、なぜか気持ちが楽になった。
鏡の中の私が言うの…
あなたは何も悪くないわよ、と。
全てを聞いていた祐司が口を開いた。
「昔から、鏡は念や気を吸収してしまうと言われています。念の強い人が鏡に向かって怨みつらみを吐き続けると、その鏡は呪いのアイテムと変貌してしまうそうです…」
祐司は尾形が持っている鏡に視線を落とした。
「さっきの黒いもやは、きっと念の塊だったんでしょう…」
起こってしまったことはもう仕方ない、後戻りはできない。
「尾形さん、話してくれてありがとうございます。その鏡はこちらで処分します」
そう言って祐司は、尾形から鏡を受け取った。