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平和のために

第15章 優しさの傷

「紫音…あのね、
聞いて?」



立っているのが辛い

紫音に抱きつく形で
もたれ掛かる





「秀一とは…
本当にそんなんじゃないの


彼は…

私が火事に合う前からの
唯一の友達だから…


確かに…
秀一は優しいけど…

それは…同情も含まれてて…」













あぁ…
とうとう口に出してしまった




いつも思っていたこと…






施設の先生も





秀一の家族も





翔太も






みんなの無償の優しさに
ふれるたびに





満たされる一方で
疑問を感じていたの








私は…あの日に…
すべてを失ってから



努力なしでは優しさは
手に入らないと知ったから






みんなの好意には
裏がある気がしていた




心を開けなかった






努力してない私への
優しさはいつか裏切られて



跡形もない灰になる気が
していたから




きっとみんな
「この子可哀想だから…」
って思って…










でも、それでも
みんながずっと優しくて



その生活に慣れてしまった私は

そんなこと…



すっかり忘れてたわ…




天国の

母さん、父さん、

兄さん、姉さん…




こんな贅沢して…



「ごめんなさい…」


一筋涙が流れた

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