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添い寝フレンド

第1章 添い寝フレンド(1)

ずいぶん殺風景だな、というのが彼女の部屋の印象。
1LDKのリビングには白い大きなソファの前にテーブルとテレビ。
壁際には低めのチェストが置かれているだけで他に目立ったものは何もない。
薄い緑で統一されたラグや小物がかろうじて彼女の部屋を女性らしく見せている。

チェストの上には香水や化粧品が無造作に並べられ、その中でアロマキャンドルが1つ居心地悪そうに埃を被って置かれている。
簡素な部屋の中でそこだけが彼女が生活していることを感じさせた。
実家から引っ越したばかりだから物がないだけという彼女の部屋は1年近く経ってもあまり変わっていない。


彼女が自分の定位置であろうテレビの正面側に座る。
ソファに背を預けて、ふぅと息を吐き出す。

あ、適当に座ればいいよ、と言いながら缶ビールを開けて僕に渡した。
自然な動作に流されるまま彼女の斜向かいに腰を下ろしてビールを口にする。

「ごめんね、ビールはそれが最後の一本なの。」
そう言って彼女はワインのコルクを抜いた。

年上の女性に対する多少の遠慮や緊張もあったのかもしれない。
ビールを空にするために口元で缶を傾けたとき、自分が車で来ていたことを思い出した。

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