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添い寝フレンド

第2章 添い寝フレンド(2)

彼女と初めて会ったこの時が、もしかすると今までで一番多く会話をしたのかもしれない。
とは言っても最初は映画を観ながらCMの間に感想を言うだけでコミュニケーションと言えるほどではなかったけど。

何度か観たことのある映画だったけど、彼女が吟味して選んだというスピーカーの音に僕は夢中になった。
映画の最中、彼女はほとんどお酒を口にしなかった。


映画のエンドロールが終わり適当にチャンネルを変えてバラエティを見始めると彼女のお酒のペースが上がった。
他愛もない話を肴に酌み交わす。

当然沈黙も多く生まれたけど不思議と気にはならない。
それよりも外から聞こえる酔っ払いと女の甲高い笑い声が僕を不快にさせた。

彼女はいつもこの部屋で一人、こんな夜に纏われているのだろうか。


彼女のグラスが空になったのを見て、ワインを注ごうとボトルに手を伸ばす。
自分でやるから、と僕を制する彼女を無視してグラスを満たす。


-一緒に飲むってのはこういうこと。

「あ、そっか。そだね。」


それからも意味も実りもない言葉と幾許かの沈黙を交わしながら時間が流れる。


-よく飲むね。明日は仕事じゃないの?

ボトルに残った最後の一杯を彼女のグラスに注ぎながら僕は聞いた。


「仕事だけど平気。出勤時間遅いから。」

視線を落としたまま投げやりに答えた彼女が無言の防衛ラインを引く。
僕はそれを理解してまた沈黙を招き入れる。

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