
激愛~たとえ実らない恋だとしても~
第11章 第三話〝花笑み~はなえみ~〟・其の参
孝俊の視線がそろそろと動く。ふっくらとした瑞々しい唇、形の良い鎖骨。豊かな膨らみから更に下へと熱い視線が美空の身体を順に辿ってゆく。あれだけの冷え冷えとしたまなざしをしていながら、その奥底には異様なほどの熱が秘められている。夜着の上から見られているはずなのに、美空はあたかも自分が丸裸にされ、孝俊の淫らな視線に睨め回され、犯されているような錯覚を憶える。
思わず恐怖と嫌悪に身をおののかせる。
そんな美空の反応を孝俊は愉しむかのように眺めている。まるで蛇が獲物の前で舌を出すような仕草で、孝俊はニヤリと笑った。
何とも陰惨な笑いである。美しい男だけに、その狂気めいた笑顔が余計に不気味だった。
孝俊に掬い上げられるようにして抱えられ、美空は絹の夜具の上に下ろされた。すかさず重なってくる孝俊の身体から、ほのかに樹木の香りがする。孝俊が気に入り、着物などに焚きしめさせている香のかおりが鼻腔をくすぐった。
以前なら、その香りに包まれただけで安堵できたのに、今は嗅ぎ慣れない匂いを嗅いだような気がする。孝俊の身体の重みをどこかで疎ましく思う自分がいることが哀しかった。
ふっと誠志郎の面影が瞼に甦る。今頃、どうしているだろうか。何をしているだろうか。
今度、誠志郎があの村を訪れても、美空はあの家にはいない。そのことを、果たして誠志郎はどう思うか。
美空がそんな想いに囚われた。
と、突如として、孝俊がパチンと指を弾く。
その音は、全く別のことに意識を飛ばしていた美空を強引に現に引き戻した。
唇が触れ合いそうなほど近くに、孝俊の端整な顔が迫っている。
狂気に染め上げた漆黒の瞳を細め、孝俊がニヤリと笑った。その手がそろりと動き、美空の夜着の前結びになった帯を解く。美空は恐怖に震えながら、唇を噛みしめ眼をギュッと瞑った。
固く閉じた眼から涙が溢れ、透明な雫が白い頬をころがり落ちてゆく。だが、孝俊はそんなことには頓着もしない。異様な光を放つ眼を欲情に翳らせながら、美空のやわらかな胸のふくらみに顔を埋めた。
思わず恐怖と嫌悪に身をおののかせる。
そんな美空の反応を孝俊は愉しむかのように眺めている。まるで蛇が獲物の前で舌を出すような仕草で、孝俊はニヤリと笑った。
何とも陰惨な笑いである。美しい男だけに、その狂気めいた笑顔が余計に不気味だった。
孝俊に掬い上げられるようにして抱えられ、美空は絹の夜具の上に下ろされた。すかさず重なってくる孝俊の身体から、ほのかに樹木の香りがする。孝俊が気に入り、着物などに焚きしめさせている香のかおりが鼻腔をくすぐった。
以前なら、その香りに包まれただけで安堵できたのに、今は嗅ぎ慣れない匂いを嗅いだような気がする。孝俊の身体の重みをどこかで疎ましく思う自分がいることが哀しかった。
ふっと誠志郎の面影が瞼に甦る。今頃、どうしているだろうか。何をしているだろうか。
今度、誠志郎があの村を訪れても、美空はあの家にはいない。そのことを、果たして誠志郎はどう思うか。
美空がそんな想いに囚われた。
と、突如として、孝俊がパチンと指を弾く。
その音は、全く別のことに意識を飛ばしていた美空を強引に現に引き戻した。
唇が触れ合いそうなほど近くに、孝俊の端整な顔が迫っている。
狂気に染め上げた漆黒の瞳を細め、孝俊がニヤリと笑った。その手がそろりと動き、美空の夜着の前結びになった帯を解く。美空は恐怖に震えながら、唇を噛みしめ眼をギュッと瞑った。
固く閉じた眼から涙が溢れ、透明な雫が白い頬をころがり落ちてゆく。だが、孝俊はそんなことには頓着もしない。異様な光を放つ眼を欲情に翳らせながら、美空のやわらかな胸のふくらみに顔を埋めた。
