
激愛~たとえ実らない恋だとしても~
第14章 第四話・其の参
されば、先刻も申したではないか。私はそなたを救いたいと。もし、そなたの罪が完全なるでっち上げだと申すのであれば、そなただけではなく、この大奥をも救うことができる。大奥から科人を出さずに済むことができる。―ばかりか、そなたを陥れようとした不届き者を逆にねじ伏せることもできよう」
また、静寂。
と、突如として矢代が小さな声を立てて笑った。ころころと鈴を鳴らすような澄んだ声で笑う女を、美空は茫然と見つめた。
「不届き者をねじ伏せる、でございますか。流石にひと筋縄ではゆかぬ、お転婆な御台さまにございますね」
聞きようによっては、相当に無礼なことを平然と言うと、ふっと笑いが止んだ。
「私が犯した罪が真実かどうか―、そのようなことなど、最早どうでも良いのです」
まるで他人事のように淡々と言ってのける。
「さりながら! そなたはこのままでは、罪人として厳罰を受けねばならぬぞ。その事を知らぬわけではあるまい。そなたは、それでも構わぬというか、矢代」
「構わぬ、と、お応え申し上げましたら、御台さまはいかがなさいます?」
矢代の口調には自棄のような響きもなく、ただ、ただ、さばさばとしていた。それは何かを諦めたというよりは、吹っ切ったというような感じに見える。
「それでは、そなたは、己れの罪を認めるというか!」
美空の脳裡に、悔し涙を滲ませていた智島の顔が浮かんで消えた。
「そなたをよく知る者は泣いておったぞ。そなたのように真面目に奉公に励む者が、よもや役者風情と密通するはずなどないと。永瀬もまた心痛めておろう。そなたを心から信じ、その無事を願う者たちのためにも、真実を私だけには話してはくれまいか。頼む」
美空は、その場で頭を下げた。
また、静寂。
と、突如として矢代が小さな声を立てて笑った。ころころと鈴を鳴らすような澄んだ声で笑う女を、美空は茫然と見つめた。
「不届き者をねじ伏せる、でございますか。流石にひと筋縄ではゆかぬ、お転婆な御台さまにございますね」
聞きようによっては、相当に無礼なことを平然と言うと、ふっと笑いが止んだ。
「私が犯した罪が真実かどうか―、そのようなことなど、最早どうでも良いのです」
まるで他人事のように淡々と言ってのける。
「さりながら! そなたはこのままでは、罪人として厳罰を受けねばならぬぞ。その事を知らぬわけではあるまい。そなたは、それでも構わぬというか、矢代」
「構わぬ、と、お応え申し上げましたら、御台さまはいかがなさいます?」
矢代の口調には自棄のような響きもなく、ただ、ただ、さばさばとしていた。それは何かを諦めたというよりは、吹っ切ったというような感じに見える。
「それでは、そなたは、己れの罪を認めるというか!」
美空の脳裡に、悔し涙を滲ませていた智島の顔が浮かんで消えた。
「そなたをよく知る者は泣いておったぞ。そなたのように真面目に奉公に励む者が、よもや役者風情と密通するはずなどないと。永瀬もまた心痛めておろう。そなたを心から信じ、その無事を願う者たちのためにも、真実を私だけには話してはくれまいか。頼む」
美空は、その場で頭を下げた。
