
激愛~たとえ実らない恋だとしても~
第15章 第四話・其の四
「今頃は、二人で黄泉路を恋の道行きと洒落ていることだろう」
「恋の道行き―」
美空の眼に涙が溢れた。
その涙をそっと人差し指でぬぐい、家俊は言った。
「だから、もう気に病むな。そなたは十分力を尽くした。矢代も歓んでいるだろう」
「上―さま」
短い言葉に深い想いを込め、二人は見つめ合う。
美空はたまらず家俊の胸に縋りついた。
子どものように泣きじゃくる美空を、家俊が優しくからかう。
「おいおい、そのようにしがみついては、ちい姫を落としてしまうではないか。しようのない奴だな。これではまるで赤児を二人、抱いているようだ。まあ、俺にとっては、そこが可愛いところでもあるんだがな」
いつもどおりの家俊の声。
いつもどおりの穏やかな時間。
美空は余計に泣けてきて、大粒の涙をポロポロと零す。
―御台さまは、公方さまに恋をなさっておられるのでございますね。
矢代の言葉を今更ながらに思い出す。
六年前、始まった恋は続いている。
今も、そして、これから先もずっと、ずっと。
泣きじゃくる美空をあやすように、宥めるように、ふた色の菖蒲が優しく風に揺れた。
「恋の道行き―」
美空の眼に涙が溢れた。
その涙をそっと人差し指でぬぐい、家俊は言った。
「だから、もう気に病むな。そなたは十分力を尽くした。矢代も歓んでいるだろう」
「上―さま」
短い言葉に深い想いを込め、二人は見つめ合う。
美空はたまらず家俊の胸に縋りついた。
子どものように泣きじゃくる美空を、家俊が優しくからかう。
「おいおい、そのようにしがみついては、ちい姫を落としてしまうではないか。しようのない奴だな。これではまるで赤児を二人、抱いているようだ。まあ、俺にとっては、そこが可愛いところでもあるんだがな」
いつもどおりの家俊の声。
いつもどおりの穏やかな時間。
美空は余計に泣けてきて、大粒の涙をポロポロと零す。
―御台さまは、公方さまに恋をなさっておられるのでございますね。
矢代の言葉を今更ながらに思い出す。
六年前、始まった恋は続いている。
今も、そして、これから先もずっと、ずっと。
泣きじゃくる美空をあやすように、宥めるように、ふた色の菖蒲が優しく風に揺れた。
