テキストサイズ

激愛~たとえ実らない恋だとしても~

第5章 第二話〝烏瓜(からすうり)〟・其の壱

 たとえ誰に何を言われようと、こうして可愛い我が子を胸に抱き、愛しい男の傍にいられる幸せ。それ以外の何を望むというのだろう。このささやかな幸せと引き替えにできるものなど、ありはしないのだ。
 美空ははしゃぐ徳千代を抱きしめ、改めて強くそう思った。この幸せを守るためならば、どのような誹謗中傷にでも、冷たい視線にでも耐えて見せる、と。
 そして、そんな幸せそうな母子を智島が傍らで見守っている。いつもどおりの、穏やかな昼下がりの光景であった。
 九月初旬、蜩が煩いほどに鳴く昼下がりのことである。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ