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異種間恋愛

第13章 秘密の大きさ

「そんな話聞いたことなかったわ」
 王家の者でよほど優秀であれば王の座が空いた時にその座を狙うことは不可能ではない。城内部が揺らいでいる時に限るが。
「だろうな。お前はパッとしない子供だったから、招待もされなかったんじゃないか?」
「むう……」
 そんなにはっきり言わなくてもいいし、そんなこと言われなくても自分で十分すぎるほど自覚している。
「とにかく、その時にストラスを見た。あいつの周りは華やかで、自然と何人もの人が集まっていた。まだ小さな子供だというのにだ。俺は焦った。それは父上も同じだった。それだけ俺たちを焦らせる風格があいつにはあった」
「ストラが?」
 確かにストラスの人を惹きつける魅力はすごい。けれど、王の座を狙おうとするとか、王に適した風格と聞くと首を傾げるしかできない。
 ストラスは何も望んでいないように生きていたから。ストラスは自分の生活全てに満足していて、しかも村の素朴な所が気に入っていた。彼には政権を握ろうなんて野心は微塵もないように思えた。
「そうだ。その日から俺のライバルはストラスだった。あいつがアスリアス王国で最年少で試験に合格したと聞けば俺もそれに挑んだし、大会で優勝したと知れば俺も技を磨いて優勝した。だが、常にあいつの背中を追うしかなかった。何をしても、先にあいつが結果を出すんだ。今だって、そうだ。あいつは色々なことに首を出していて何がしたいのかいまいち分からないが、そこもまた恐ろしい……」
 ラドゥがストラスを恐れているなんて。ラドゥの口から恐ろしいという言葉が出たことに私は驚いた。そう発言した本人は言ったあとにその言葉の重さに気が付いたのか気まずそうに口を閉ざした。
「ストラは好奇心が旺盛なのよ。ただ、それだけ。すごく優しい普通のお兄さんよ」
「……どうだかな」
 ラドゥの疑問形の発言に最後に見たストラスの姿が目に浮かんだ。
 涙を流しながら私に重すぎる告白をした白い肌の青年。目を覚ましただろうか。怪我は治っただろうか。後遺症はないだろうか。
 そんな心配が次から次へと胸を支配した。
「そのストラスだがな実は最近……」

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