
異種間恋愛
第13章 秘密の大きさ
ラドゥが屈んで私の顔を覗き込むと柔らかそうな茶髪からいい香りが漂ってきた。赤い瞳が私を見つめる。いつもは自信に満ち溢れ、見ているこちらが畏敬の念を感じてしまうほど強い視線なのに、今は瞳が小刻みに揺れて不安げに見える。
骨ばった指が私の頬をさらりと撫でた。
顎を掴んだ時と同じ手とは思えないくらい優しい手だ。
「風邪のひき始めかもしれない。今日はすぐ寝ろ」
ラドゥはそう言うと私から身を離して私の腕を掴むと歩きだした。
「ラドゥ王子、ありがとうございます」
「堅苦しい喋り方はするなと言った。あと、呼び捨てでいい。よし、ついた」
目的地である私の部屋に着いたというのにラドゥは帰ろうとしない。
「あの?」
「ストラスのことだが……」
「……っ」
急に切り出された名前に思わず肩を揺らした。
私はラドゥを部屋に入れた。
「ストラがなに?」
「いつからあいつを知っている?」
いつからだろう。気付いた時から知っている、という答えはおかしいだろうか。向かい合った立派なふたつの屋敷は祖父母の時代からあるとストラスのお母様から聞いたことがある。
そうすると、グラドの娘オレリアと息子のアルフォンソが兄妹そろって田舎に屋敷を建てたのだろう。いくら仲の良い兄妹だとしてもラーナから離れた小さな村に向かい合って屋敷を設けたというのは不思議だ。
「もういい。早く休め」
答えようとしない私にラドゥはため息をひとつ吐き出した。
「ラドゥはストラを知ってるの?」
私は整えられたベッドに腰掛けた。
「少し知っている」
「どうして?」
私は王にも王子にもあったことがなかった。王族とはいえ、王子に謁見する機会はそうそうない。
「昔、あいつも俺も小さかった頃に城でパーティーが行われた。その時に王家の者も数人招待したんだ、その内のひとりがストラスだった。あいつはその頃から頭がいいだの容姿がいいだの評判だったからな、いずれ王の座を狙うかもしれないと父上がお考えになった。その偵察みたいなものだ」
骨ばった指が私の頬をさらりと撫でた。
顎を掴んだ時と同じ手とは思えないくらい優しい手だ。
「風邪のひき始めかもしれない。今日はすぐ寝ろ」
ラドゥはそう言うと私から身を離して私の腕を掴むと歩きだした。
「ラドゥ王子、ありがとうございます」
「堅苦しい喋り方はするなと言った。あと、呼び捨てでいい。よし、ついた」
目的地である私の部屋に着いたというのにラドゥは帰ろうとしない。
「あの?」
「ストラスのことだが……」
「……っ」
急に切り出された名前に思わず肩を揺らした。
私はラドゥを部屋に入れた。
「ストラがなに?」
「いつからあいつを知っている?」
いつからだろう。気付いた時から知っている、という答えはおかしいだろうか。向かい合った立派なふたつの屋敷は祖父母の時代からあるとストラスのお母様から聞いたことがある。
そうすると、グラドの娘オレリアと息子のアルフォンソが兄妹そろって田舎に屋敷を建てたのだろう。いくら仲の良い兄妹だとしてもラーナから離れた小さな村に向かい合って屋敷を設けたというのは不思議だ。
「もういい。早く休め」
答えようとしない私にラドゥはため息をひとつ吐き出した。
「ラドゥはストラを知ってるの?」
私は整えられたベッドに腰掛けた。
「少し知っている」
「どうして?」
私は王にも王子にもあったことがなかった。王族とはいえ、王子に謁見する機会はそうそうない。
「昔、あいつも俺も小さかった頃に城でパーティーが行われた。その時に王家の者も数人招待したんだ、その内のひとりがストラスだった。あいつはその頃から頭がいいだの容姿がいいだの評判だったからな、いずれ王の座を狙うかもしれないと父上がお考えになった。その偵察みたいなものだ」
