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異種間恋愛

第15章 暴かれた婚姻

「……」
 昨日と言っていることが違うのはどういうことだろう。
「でも、それをラドゥに言うのは危険だったんだ。信じられないかもしれないが、あいつの中にはあいつでない者が住んでいる。そいつにどうやって呪いを解いたかを知られるのはまずいんだ。呪いの始まりと終わりを明らかにすることは新たな呪いを生んでしまう。だから、あんなことを言った。悪かった」
「本当?」
 わざと的外れなことを言ったのには理由がちゃんとあったと知って私の心臓は生き返ったように元気に動き出した。その事実のほうが私の心を動かしてもうひとつの気になる言葉を気にする余裕が私にはなかった。
「ああ。お前の気持ちのおかげだ。すごく……その、嬉しかった」
「レオ。私、すごく不安で……っ」
 私はタオルを振り払うように起き上がるとベッドの傍にしゃがみこんでいたレオに飛びついた。
 突然のことにもレオは体勢を崩さずに私を受け止めるとゆっくりベッドの上に私の身体を戻した。
「悪かった。こんな目にさせるなんて思わなかった」
 レオが優しく指で私の瞼をなぞる。くすぐったいのに気持ちがよくて気を抜けば再び眠りについてしまいそうになるくらい心地いい。
「私も、自分がこんなに泣き虫だなんて思わなかったわ」
「リアは自分が思っているより弱いんだ。だから強がるな。なんのために俺が存在していると思う」
 綺麗な青い瞳が私を見つめている。この瞳には勝てない。
 思いっきり甘えたい気持ちが収まらなくなって私はレオの胸に耳を当てた。
 ドクン、ドクン。と確かにレオが生きている証拠が聞こえてきた。
 すると急にレオのお腹から何かの鳴き声のような音が聞こえた。
「あ」
 レオがぽつりと呟いた。私がレオの顔を見やると口をぽかりと開けている端正な顔があった。
「ふふっ。レオ、お腹すいてるのね」
 レオは黙って頷いた。
 そういえばレオがライオンの姿だったとき、レオはあまり食事をしなかったっけ……。
「人間の姿に戻ってから異常に腹が減るんだ。ライオンだったときは食べなくても死なない、死ねない状態だったからそんなに食べようとも食べたいとも思わなかったが」
「死ねない状態……」
 呪い。その言葉の内に秘められたものが多すぎて私にはまだまだ理解することができない。

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