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異種間恋愛

第15章 暴かれた婚姻

 森でストラスに襲われた時の彼の表情と今の表情が同じだ。
 記憶を失ってもストラスは私といる限り幸せにはなれないのかもしれない。
「体は好きにできるのに、どうして心は思い通りにならないんだろう」
 小さな独り言にもとれる呟きと同時にストラスの手が力を失って、だらしなくベッドから垂れ下がった。
 私はその白い手首と手の平を支えるようにしっかりと握りしめた。
「私のここもストラスのここも」
 私はそこで言葉を止めてストラスの左胸に手を置いた。中に小さな小さな小鳥がいるように僅かに、それでも確かに懸命に生きる証があった。
「動いてるからよ」
 生きているからこそ気持ちは移ろい行くし、どんなことだってできる可能性は見出せる。だから、もう自分で自分の存在を消してしまおうなんて思わないでほしい。
 ストラスは小さく息を吐き出して、ベッドに全身を任せた。
「そうか。そうだね」
 私の説明不足の言葉でストラスが何を悟ったのか私にも分からない。けれど、ストラスはそう呟きながら穏やかな表情になった。
「いいよ」
「え?」
「行っても。彼の後を追いたいんだよね。ずっと足踏みしてる」
 ストラスは呆れたようなはにかみ笑顔で私の足元に目線だけを落としてそう言った。ストラスの想いが嬉しかった。
 だからこそ、無駄にできない。
 私はひとつ大きく頷くとベッドに背を向け走り出した。

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