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異種間恋愛

第16章 見えない想い

 どこを探してもレオがいない。
 ストラスとの長くはないやり取りの間にどこへ行ってしまったと言うのだろう。
 レオの部屋にも食堂にも練習場にも黄金の頭が見当たらない。
 あんな短時間でどこまで行ってしまったと言うのだろう。この城から出て行った? 門番も守衛たちも大勢いるのにラドゥの許可なしで城を出るなんてことができるのだろうか。
「どうした騒がしいな。それより、ストラスの具合はどうだ?」
 ラドゥが城の広いエントランスにひとり立ちつくして呆然としているのを見つけたようで、長い廊下の先からさっきの美女たちを引き連れてやってきた。
「ストラスってあのストラス様のこと?」
「ここにいらっしゃるのかしら」
「きゃあ、私ずっとファンだったのよ」
 騒ぐことに忙しそうな彼女たちはストラスの噂を隠すこともなく口ぐちに囁く。ラドゥの側室候補ならば、もっとラドゥにだけ忠誠心を見せるべきではないだろうかとぼんやりした頭で思った。
 まあ、レオとストラスが絶世の美男子でさらに王族となればもうラドゥでなくてもいいのかもしれない。
 私はそんな人たちと違う。
「ストラスは……寝てるはず。レオを見なかった?」
「ああ、ティオンなら中庭にいたぞ。様子が変だったが、なにかあ……っておい! 人の話は最後まで聞くものだっ」
 ラドゥが遠くから叫ぶのが聞こえたが、私は構わず走り続けた。
 渡り廊下を駆け抜けると丁寧に整えられた中庭が現れた。
 美しい色とりどりの薔薇が咲き、庭の真ん中にある噴水とガラスで四方を囲まれた小さな円形のテラスがある。
 求めている姿が見当たらず私はぽつりとその名前を漏らす。
「レオ」
 どこか別の場所へ移動してしまったのかと思い、渡り廊下に戻ろうとしたとき視界の隅のほうになにかを捉えた。
「あ」
 低い植木の向こう側に寝そべっている誰かの投げ出された腕が見えたのだ。
 その肌を見ただけでそれが誰だか分かってしまう。
 そっと近づくと、こっちの気配を察しているはずなのに身動き一つしない。
 地面に仰向けに横たわる長身の青年は彫刻のような顔を空に向けて、目を閉じていた。
「レオ、あのね。さっきのは」
「いい」
 言葉を被せるように言い放たれた言葉は今までにないほど冷たく鋭く私に突き刺さる。

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