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異種間恋愛

第17章 見守る人

「……風邪をひく。俺のベッドで寝かせる」
 何を言い出す。
 リアを男のベッドで寝かせれるはずがない。
「ベッドならここにあります。わざわざレオン様のベッドを使わせていただく必要はありません」
「お前も休む必要があるだろう。リアとお前を同じベッドで寝かせるわけにはいかない」
 そういうと部屋に入ってきて、ベッドの傍までくると座り込んで熟睡しているリアの身体に触れようとした。
 思わずその手を制止する。
 嫌味なほど美しい均整のとれた腕を僕の女々しい手が掴んだ。
「何だ」
「やめてください。リアが起きます。僕はずっとリアと同じベッドで寝てたんです。今さら躊躇うこともありません」
 僕の言葉を聞いた途端に青い瞳が見開かれた。
 そして座り込むリアと僕と繋がったままの手を見つめる。
 今、彼はどんな感情に支配されているだろうか。自然と僕の顔がゆるんでしまう。
 僕はなんて醜い性分をしているんだろう。それでもやはりリアが僕を想ってこんな状態を晒しているのだと思うと嬉しくてたまらない。
 そろそろとどめを刺そうか。
「それに、僕らは幼い頃から許嫁。婚姻の儀ももう行いました。そんな彼女を他の男の部屋で寝かせるなんて……ね」
 わざとゆっくり諭すように喋るとティオン様の表情から血の気が失せてリアに伸ばしていた手からだらりと力を抜いた。
「婚姻の儀を……」
「はい」
「でも、お前はリアを……」
 すぐに引き下がると思っていたのにここで予想外のことを口にした。
「リアを……幸せにはできない」
 今度は僕が目を見開く番だった。
 苦し紛れになんの根拠もなくそんなことを口にする人間ではないことを確信しているだけに彼の言葉の真意がすごく気になった。
 けれど、それを聞く気にはなれずにすぐに表情を作り直す。
「誰になんと言われようと僕はリアを幸せにします」
「お前が決めることじゃない。リアが決めることだ」
 一瞬何を言われているのか分からなかった。
 意味を理解した瞬間、リアはどうしてこんな強者を惹きつけて、僕の敵にしてしまったのだと歯を噛みしめた。

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