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異種間恋愛

第17章 見守る人

 ラドゥ王子も僕の気持ちを察したように、開けかけた口を一度つぐんで、少し考えていた。
「俺は……そうだな。変えたいんだ」
「何をですか?」
 自分か、国か、それとも……何だろう。
 ラドゥ王子が美しい顔を傲慢な笑顔でいっぱいにした。
「全てをだ」


 全てをか。ラドゥ様らしい答えだ。
 思い出して小さく笑ってみた。
 表情を作るなと言われたことを思い出して笑うのをやめた。
 いや、今のは作ったものではなかった。 
 本当にそうか?
 たぶん、そうだ。
 どうして? どこから本物でどこから偽物なんだろうか。
 そんなの見分けられるはずがないだろう。
 頭の中で繰り返される無意味な討論に僕はため息を吐いた。
 生まれたときから周りの人たちの好奇の目と媚びるような視線にさらされて生きてきた僕は彼らにぶっきらぼうな言葉を投げ捨てることもできなかった。
 そこが僕の弱い所だ。ラドゥ王子やティオン様のように思ったことを口にできて、思ったことを顔に出せるならそうしたい。けれど、僕がそれを真似したみた所で二人のようにうまく生きていく自信がなかった。
 僕にとって他人から好かれることは必然でもあり、必要な栄養のようなものだった。
 だからこそ、誰もなるべく傷つけないような表情を作り、言葉を選び、穏やかに喋る。
「リア? さっきラドゥ王子が捜していたよ。あれ、リア?」
 中庭にリアの姿は消えていた。
 嫌な予感がした。
 昨日の今日だ。昨夜、リアはなにか決意したような清々しい目をしていた。
 勝手に行動しないように言ったのに……。それに、今朝はああ言ったけれど、まだ体も頭も痛む。
 この城の中は台風の目のように穏やかかもしれないけれど、一歩出てしまえばなにが待っているのか僕にだってよく分からない。
 リアは村から連れていかれた若者たちがどこにいるのか探りに行ったに違いない。
「せめて僕に頼ってほしかったな」

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