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異種間恋愛

第18章 王子の暗闇

「ここ……どうなってるんだろ」
 城の後ろに隠れるようにしてある建物を調べようと付近をうろついていると正面の扉とは別に小さな扉がついているのに気が付いた。
 扉というより、穴を塞いでいるだけのようなそれは人間がはいるために作られているとは思い難いほど低い位置にある。猫か犬なんかの出入り口のようだ。
 私はなにか見つかるかもしれないという気持ちの昂ぶりに任せてお腹を地面につけ、手で這うようにしてその穴から建物にはいった。
 なんの恐怖も不安も感じなかった。ただ、早く真実が知りたかった。
 入ったところは真っ白な世界だった。
 壁も床も全てが真っ白で眩しく、階段があるのか扉があるのかも一瞬目がくらんで確かめることができないくらい全てが白く同化していた。
 色があるものと言えば私の存在だけだ。
 今日は真っ赤なドレスを着ていたので余計に白い空間で私の存在だけが浮き立つ。
「あれ、廊下?」
 目が慣れてくるとそこに一本の廊下が続いているのが分かった。迷わず進むと行き止まりになっていてそこにひとつのドアノブがついている。
 真っ白なドアノブに手をかけた。
 ここまでなんの躊躇もなく進んできたけれど、今になって心臓が思い出したように暴れ出す。
 なにかこの先にはある。そう本能が訴えかけるようだ。
 今なら戻ってストラスにこのことを教えて協力するなり知恵を貸してもらうなりできる。
 ……また、甘えようとしている。
『俺を頼れ』
 頭の中で蘇るレオの声。
 優しく力強く、私の頭を溶かしてしまいそうな声だった。
 頼った。今まで数えきれないほど頼った。
 行く場所のない私を救ってくれたし、食べ物への感謝も教えてくれた、足が痛むと背中にも乗せてもらった。ここまで来れたのだった全てレオのおかげだ。
 ラドゥに追われたときも思い切って崖から飛び降りたのはレオを信じて頼っていたからだ。
 でも、そんなことも今となってはただの思い出。もう二度とレオに頼ることはできないだろう。
 レオに書いた手紙が今朝、食堂近くのゴミ捨てに捨ててあった。
 メイドたちの立ち話に耳を傾けると、苦々しい顔をしたレオが朝早く食堂に降りてきたときにその手紙を持っていて、ため息をつきながら捨てたと言っていた。

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